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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第791回 2023.5/18

古文研究法135-4 井原西鶴世間胸算用」より:せめて金銀わがものに持ち余りてすればなり、降っても照っても昼夜油断のならざるを出す銀(かね)借る人の身代にて、かかる女の寛闊(くわんくわつ)能々(よくよく)分別しては我と我が心の恥かしき儀なり。明日分散にあうても女の諸道具は(のが)るるによって、打ちつぶしてまた取りつき世帯の物種にするかと思はれける。

せめて自分の財産がタップリあるのならばともかく、来る日も来る日も気の許せない利息を支払うような借金町人の分際で、女房がこうした贅沢を自由にやらかすなんて、よく考えてみれば自分で自分の心が恥ずかしくなるはずの所業だ。明日破産になっても妻の所有物件は差し押さえられないから、一旦破産の処置をしてから再出発するための営業資本にそいつを充てるのかしらん、と勘繰られるくらいである。

N君:昔も今も借金生活を繰り返す人がたくさん居ますが、結局は「きつい経済状態に見合わない贅沢をやってしまう」からそうなるのでしょうね。そこには女性特有の虚栄心が介在しているのでしょう。女性に限らず男にもそういう人がいっぱい居そうな気がします。西鶴先生の警句は令和の現在にも届いていますね。「すればなり、~」には逆接の雰囲気があります。ここは「係り結びがそこで終わらずに続いていく時の逆接用法」と全く同じで「せむこそあれ、~」と書き換えることができます。平安時代の定型が江戸時代になって変形したのでしょうか。「利を出す」は「利息を支払う」です。「身代」は「身分、分際」です。「寛闊」は「のびのびと自由に振る舞うこと」を言います。「分別」は「考慮」なので、「能々分別しては」は「よくよく考えてみれば」です。「分散」は「破産」です。「遁るる」は「差し押さえをのがれる」つまり「差し押さえられない」です。「世帯の物種」は「営業資本」。差し押さえを免れた女房の着物や化粧道具が、破産後の生業(なりわい)の元銭になりそうだね、と西鶴先生がおっしゃっています。

I don't know about the rich but, common tradesmen or artisans, at least, should lead a frugal life.  Although everyday they are struggling to make both ends meet depending on their loan, they let their wives waste money on luxury goods.  When you come to think of their thoughtlessness, you will find it a very shameful conduct.  But I have a different viewpoint.  No matter how miserably they go bankrupt, their wives' belongings will never be distrained.  Therefore they may use the property as a source for their new venture.  How flippant and tough they are !

S先生:よく書けています。後半は positive 過ぎて原文の内容とは少し離れてしまった感がありますが、面白い捉え方ですし作文もなかなかのものです。第1文の the rich「お金持ち」のような「定冠詞+形容詞」のパターンがサッと出てくるようになりました。第2文には第788回に続いて make both ends meet「両端を合わせる、収支を合わせる、なんとかして辻褄を合わせる」が出ました。お金の話では大切な idiom かもしれませんね。

Not having enough money to lead a daily life, most townspeople barely manage to live on borrowed money.  Needless to say, they are forced to pay back the money with mercilessly high interest.  In spite of the fact that they are in such a difficult situation, their wives are free and easy enough to live a luxurious life.  I can't believe that they don't realize how shamelessly they are spending their days.  Even if the marchants have gone bankrupt, their wives' belongings will never be attached.  Making cunning use of this system, they rely on the property for recovering from their bankruptcy.

N君:先生の第3文に出て来る free and easy は「自由で気儘(きまま)」と考えてよいですか?

S先生:よいです。「呑気で無頓着」みたいな意味です。