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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第788回 2023.5/15

古文研究法135-1 井原西鶴世間胸算用」より:世の定めとして、大晦日(おおつごもり)は闇なること、天の岩戸の神代このかた知れたる事なるに人皆常に渡世を油断して毎年ひとつの胸算用違い、節季(せっき)を仕廻(しま)いかね迷惑するは面々覚悟悪(あ)しき故(ゆへ)なり。一日千金に替へ難し。

世間の決まり事として大晦日(おおみそか)が闇である事は天の岩戸の神代以来分かりきっているのに、世の中の人は皆いつも経済生活をうっかりしていて毎年たった1回の思惑違いが起こって決算をやりくりできず途方に暮れるのは、各人の心掛けが悪いからです。この大晦日の決算日1日は千両の金にも替えられないほど大切です。

N君西鶴先生はお金の話が多い気がします。下世話ですが庶民の暮らしに直結する話ばかりで面白いです。今回も期待が持てます。江戸時代ともなると古文も随分分かり易くなってきましたが、それでも現代語とは微妙に意味の異なる単語があって注意が必要です。「大晦日は闇」とのことですが、太陰暦においてはいつも月末が闇夜でした。「胸算用」は現代語とほぼ同じで「思惑」くらいの意味。「節季」は「売買の決算期」を指します。田舎では盆・暮れの二節季ですが、大阪あたりの商業地域では60日毎に節季があって、3/2 5/4 7/14 9/8 10/30 12/30 の六節季だったそうです。商人も大変ですね。「迷惑」は現代語とは少し違っていて「自分のせいで自分が困ること」です。「覚悟」は「心構え」なので現代語とほぼ同じ。「一日千金に替え難し」の「一日」は「大晦日の決算日」を指しています。蘇東坡(そとうば)は「春宵一刻値千金」と歌って「春の宵の風情は2時間あたり千両の値打ちがある」と言いましたが、西鶴先生は「大晦日の決算日1日には千両の値打ちがある」と言いました。それぞれに味わいがあります。

It goes without saying that the last day of the year has been a serious dead line of everything since the mythical age of Ama-no-Iwato.  Quite a few people, however, are not careful about their economical situation.  They are disappointed on the very day.  They can't make both ends meet even in a maze of debt because they have been too nonchalant about money.  For marchants, the last day of the year is as important as one thousand ryo.

S先生:第1文の dead line は一語で deadline「締め切り」が正しい。全体的によく書けています。第1文の It goes without saying that ~「~は言うまでもない」や、第4文の make both ends meet「なんとか辻褄を合わせる、収支を合わせる」が使われていて、とても良いと思います。第3文に They are disappointed on the very day.「お金に自堕落な人達はこの大晦日になってガッカリする」が出ました。これを見て思い出したことがあったのでちょっと触れておきます。それは「過去分詞disappointed の主語は人、現在分詞disappointing の主語は人ではなくて物事」という点です。例文を挙げると、I am disappointed to hear the news.  「その知らせを聞いてガッカリだ」に対して、It is disappointing that you have done such a thing. 「君がそういう事を言うとはガッカリだ」 という具合。第4文の「A because B」という構成は「The reason (why) B is that A」としても良いですがちょっとコッテリした文になります。

There is no one who does not know that New Year's Eve has been utterly dark since Goddess Amaterasu hid herself behind the Rock Door of the Heaven.  It is on this very day that every trades man should pay back all the money once a year.  To our regret, however, they have lived so careless a life that they don't have enough money to repay when the last day has come.  It is because of the lack of their preparation for the worst that they are in a panic.  They must not forget that the last day of the year, the day for settlement, is far more important than one thousand ryo.

N君:先生の第2文に出た every trades man を第3文の they で受けているようですがこれは間違いだと思います。第3文では he とか she で受けるべきだと思います。

S先生:おっしゃる通りで、原則としては「every ~」は he や she や it で受けるべきです。しかし実際の英文ではしばしば「every ~」を they で受けてしまうのです。ルールと実際の差ですね。

N君:先生の第3文 they have lived so careless a life that ~「あんまり自堕落に過ごしてきたので~」の語順が気になりました。

S先生:本来は live a careless life の語順ですが、so が入ったことににより形容詞が前に引っ張られて live so careless a life that ~ の語順になりました。難しく考えるよりも so kind a man = such a kind man として体で覚えるほうが良いでしょう。