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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第859回 2023.7/25

古文研究法155-1 大鏡より:村上の御時の宣燿殿(せんえうでん)の女御、かたちをかしげに美しうおはしけり。帝いとかしこく時めかせ給ひてかく仰せられけるとか。「生きての世死にての後の後の世も 羽を交(かは)せる鳥となりなむ」。御返し、女御、「秋になることの葉だにも変はらずば 我も交せる枝となりなむ」。

村上天皇の御代の宣耀殿の女御は御器量が良くて愛らしくいらっしゃった。帝は彼女を大変寵愛してこんなふうに詠んだということだ。「生きているこの世ではもちろんのこと、死んでから後のあの世でも、比翼の鳥となって離れずに愛し合っていこうよ」。その返歌として女御は「秋になると木の葉の色は変わりますが、今の陛下の御言葉がもし変わらないなら、私も連理の枝となって御傍におりましょう」と詠んだ。

N君:比翼の鳥・連理の枝 は、白居易長恨歌」の中で唐の玄宗皇帝・楊貴妃の永遠の愛が歌い上げられたその話に登場します。本シリーズでも第1回~第60回で検討しました。「ときめく」は「寵愛する」で、この単語は源氏物語桐壺の冒頭にも登場しました。これは本シリーズの第61回でした。

In the reign of Emperor Murakami, Empress Senyoden was famous for her beauty.  Loving her indeed, His Majesty composed a poem : "Why don't you live together with me like the imaginary pair of male and female birds named Hiyoku-no-Tori, not only in the real world but also in the next one ?"  Her Majesty also composed one to reply : "If your words never change unlike the leaves changing their colors in autumn, I will be together with you like the imaginary pair of male and female branches named Renri-no-Eda."

S先生:漢文的な対句表現を採り入れた英作文で、とても良いです。

In the reign of Emperor Murakami, Empress Senyoden was so lovely and beautiful that He loved Her deeply.  He gave to Her the following poem : "Let's continue to love each other not only in this present life but in the next world as if we were the legendary male and female birds who are said to have always flown happily together with one wing."  She replied to Him, "Though the leaves turn red or yellow in autumn, I shall always live with Your Majesty like a legendary bough born out of two trees, believing in Your words."

N君:先生の第4文に出て来る shall はどういう用法ですか?

S先生:強い意志を表す shall です。第2次大戦の始めの頃 MacArthur がフィリピンからオーストラリアへ逃れる時に残した言葉 I shall return.「どんなことがあっても戻って来るぞ」が有名です。

N君:同じく第4文に believe in ~ が出ましたが、believe の他動詞と自動詞について教えて下さい。

S先生:研究社の辞書から例文を引いておきましょう。I believe you.「君の言う事を信じるよ」。I belive in you.「君の人格・力量を信頼してます」。

オリジナル勉強風呂Gu 第858回 2023.7/24

古文研究法154-3 おらが春(小林一茶)より:その噂、東西南北にぱっと弘がりぬ。つらつら思ふに、全く有りとは信じ難く、また、ひたすら無しと片づけ難し。天地不思議のなせるわざにて、いにしへ甘露を降らせ、少女(をとめ)天下りて舞ひし例(ためし)なきにしもあらず。

その評判がアチコチにパッと拡まった。よく考えてみると、そんな事が本当に有るとは信じ難いし、また、全然無いとも言えない。宇宙の現象として起こった事であり、その昔、甘い雨が降ったり天女が降りてきて舞を踊った前例がないわけではない。

N君:江戸時代に「噂がパッと広がった」なんて言ってたんですね。この「パッと」に驚きました。

The rumor spread fast here and there.  Pondering over it, I shall suspect its reality.  But no one will be able to completely deny it.  I think it will be one of the phenomena in cosmos.  Until now we have had mysterious experiences :  A sweet rain fell or a heavenly maiden danced in front of us.

S先生:良いと思います。第3文では分離不定詞も使われていて多彩になってきました。色々な形に挑戦していくことは大切です。

The rumor spread everywhere at once.  When we stop to think about it, we find it impossible to believe whether such a phenomenon will happen or not.  It is one of the universal phenomena.  According to an early legend, a sweet rain fell and a heavenly maiden alighted on the earth to dance.

N君:先生の第2文前半 When we stop to think about it,  は「立ち止まってよくよく考えてみると」でよいですか?

S先生:それで良いです。stop to do「立ち止まって~する」、stop doing「~するのをやめる」です。有名な例文としては、He stopped to smoke.「立ち止まってタバコを吸った」、He stopped smoking.「タバコを吸うのをやめた」。try や remember でも同様のことがあるので注意しておきましょう。try to do「頑張って~しようとする」、try doing「試しに~してみる」。remember to do「忘れずに~する」、remember doing「~するのを思い出す」。要するにこのような動詞は、後に不定詞が来た場合と動名詞が来た場合で、意味が違ってしまうのです。長文の中でこれらに出会った時にどの意味だったか即座に判断できませんよね。そういう時には「窮余の策」として、「to 不定詞はまだやってないこと、動名詞はもうやってしまったこと」として考えてみてはいかがでしょうか。

オリジナル勉強風呂Gu 第857回 2023.7/23

古文研究法154-2 平家物語より:雲海沈々として晴天既に暮れなんとす。孤島に夕霧隔てつつ海上に浮かぶ。極浦の浪を分け、汐(なぎさ)に引かれ行く舟は半天の雲に遡(さかのぼ)る。日数(ひかず)(ふ)れば都は山川程を隔てつつ遠国(おんごく)はまた近くなる。はるばる来ぬと思ふにも尽きせぬものは涙なり。

その果ては雲に続く海原がひっそりとして青空はもう暮れようとしている。離れ小島を夕霧が隔てて月は海上に浮かぶ。どこまでもウネウネと続く浦沿いに、浪を押し分け潮流に引かれて行く舟は、中空の霧の中まで分け入って行くような気がする。日数が経つにつれ、都との間は山や川が隔てていき、都では遠国と思っていた国が今は近くなった。はるばるやって来たと思うにつけ、涙が限りなく流れる。

N君:平家が都を追われて落ちていく様子が描かれています。「沈々」は「ひっそりとした様子」を表します。「月海上に浮かぶ」とわざわざ言ったところがミソです。都に居れば月は山の端から出て山の端に沈むわけであって、西国の海に近い国に居るからこそ月は海から出て海に沈みます。海上の月、というのが都人にとっては「ちょっと考えられないこと」だったのでしょう。それを言うだけで「ああ、都から離れたなあ」という感慨が浮かぶのでしょう。

The boundary between clouds and sea is in the silence of twilight.  The small island is screened by an evening mist.  To my surprise, in this area far from the capital, the moon looks like floating on the sea.  A ship on a tidal current plows the waves along a long and meandering shore.  It just like pushes its way through a white mist in midair.  Spending day after day in my travel, I find the capital far away behind mountains and rivers.  Now the country which I thought was remote has become near.  Looking back the long journey, I can not hold back my tears.

S先生:全文を基本的に現在時制で通しておりイキイキした感じが出ています。よく工夫された作文でほとんど言うことはありませんが、一つだけ言っておきましょう。第5文末の mountains and rivers ですが、長短の単語を並列する場合には発音的に「短 and 長」の順序としましょう。したがってここでは rivers and mountains です。

A sea of clouds spread silently over the sea.  A blue sky is changing into a dark one.  A solitary island is hidden by an evening mist.  The moon is shining brightly on the sea.  Our boat is sailing against the waves and with the tide along the shore.  Sometimes it looks as if it were going up into the clouds in midair.  As the days go on, the capital seems to be far and far away separated by rivers and mountains.  What a great distance we have sailed from Kyo !  Thinking of the hardships during the sea voyage, we are moved to tears inspite of ourselves.

オリジナル勉強風呂Gu 第856回 2023.7/22

古文研究法154-1 枕草子より:炭櫃(すびつ)(ひま)なくゐたる人々、唐衣(からぎぬ)こきたれたるほど慣れやすらかなるを見るもいとうらやまし。御文とりつぎ、立ち居、行き違ふさまなどのつつましげならず、もの言ひ、ゑ笑ふ。いつの世にかさやうに交らひならんと思ふさへぞつつましき。さしつどひて絵など見るもあめり。

火鉢にあたりながら隙間なく座っている女房達がゆったりと唐衣を着流している様子が、もの慣れ落ち着いているのを見るにつけても誠にうらやましい。手紙の取次をしたり立ったり座ったり行きかう様子なんかが平気そうで、おしゃべりをしたり微笑んだりしている。それを見るといったいいつになったら自分もあのように付き合いができるのだろうかと想像することさえ気が引ける。他の場所では集まって絵など見ている女房達もいるようだ。

N君清少納言がまだ宮仕えに出たばかりで物慣れていなかった頃の回想記事 reminiscence です。「ひま」は「すきま」のこと。「こきたる、扱き垂る」はもともと「垂れ下がる」の意味で、唐衣を垂れさがるように着ている、ということは要するに、ラフに着流している、という意味になります。「つつまし」は「気が引けて、気兼ねして」の意味なので、その反対の「つつましげならず」は「平気で」ということ。「見る」は連体形で、後に「女房達」という名詞を補って考える必要があります。このパターンはこれまで何度も出て来たので、最近はさすがに分かるようになりました。「あるめり」→「あんめり」→「あめり」です。

I, one of newcomers in Court, cannot help behaving in a constrained manner.  Therefore I am indeed envious of senior ladies-in-waiting who sit together around a charcoal brazier in their casual clothes called Karagoromo and cope with daily work calmly.  Never getting upset, they pass letters to their master, stand, sit, and talk with smile.  Seeing their cool and elegant manner, I lose my confidence because I never image I can get along with them.  When in the future can I behave friendly like that ?  Some ladies-in-waiting seem to see paintings together in another room.

S先生:立派な作文ですが1か所だけ誤りがありました。第4文後半 because 節の中にある動詞 image です。そもそも image はほぼ名詞「像」として使われ、たとえ動詞として使われたとしても「彫像する」のような意味です。「なにかをイメージする、想像する」と言いたいなら imagine を使うべきです。日本語の「イメージする」を英語でついつい image としたのでしょうが、これは誤りなので今後気を付けておきましょう。

I have only recently been in service at Court.  I am very envious of the older ladies-in-waiting in loose clothes who are warming themselves sitting crammed around a charcoal brazier.  They hand letters to their seniors.  They sit and stand in a casual way, chatting and smiling to each other.  Will I be able to behave myself as easily as they are ?  There seem to be some ladies appreciating pictures in another room.

 

オリジナル勉強風呂Gu 第855回 2023.7/21

古文研究法153-12 芭蕉:雲雀(ひばり)より上に安らふ峠かな

峠に登り着いて一休みしているとヒバリの声が聞こえる。いつもは頭の上に聞く声だが今は下から聞こえてくる。

N君小西甚一先生の解説によると「微かな驚きと無心の喜びが感じられる一句」とのことでした。確かに、ヒバリの鳴き声が下から聞こえてきたら、ちょっと驚くけれどなんだか人に教えてあげたいような喜びがありますね。

Although I used to hear a skylark chirp high up in the sky, today I hear her chirping from below my foot because I have climbed up to the top of a pass.

S先生:from below my foot の my foot はなくてもよいと思います。

Taking a rest after having reached the top of a pass, I hear a skylark chirping merrily.  Usually heard from over my head, strangely enough, the chirp now comes from below.

オリジナル勉強風呂Gu 第854回 2023.7/20

古文研究法153-11 芭蕉:春なれや名も無き山の朝霞

普段なら見過ごしてしまいそうな平凡な山に朝霞がたなびいて何となく心惹かれる、春だからだろうか。

N君:「春なれや」というのは「春だなあ」くらいの意味かと思っていたのですが、「~、春だからだろうか」だったとは驚きました。小西甚一先生の解説によると「めざましいもの・美しいものでなくてもシミジミと心を惹かれるところに芭蕉らしさがある」とのことでした。ここでも陰性美ですね。

I am somehow fascinated by the morning haze hanging over a mountain, which is nothing but an usual scene.  Why am I touched by that ?  Probably because spring has come.

S先生:第1文末の an usual scene が間違いです。どこがいけないか分かりますか? 辞書を引いて usual の発音記号を確認してみると、この頭の u の部分は母音ではなくて[ju]になっています。したがって不定冠詞は an ではなくて a です。これに関する有名な話として a UFO があります。略して UFO と言うときには頭の部分の発音は母音ではなくて [ju] になっているので不定冠詞は a です。ところが full で書いた unknown flying object の場合は頭の部分は [u] という母音なので不定冠詞は an になります。こういう一見どうでもいい小話みたいなことが、昔ある大学の入試問題に出たことがあって、油断も隙もありません。受験生は大変です。

I am somewhat captivated by the quiet scene of an unknown mountain where a morning mist hangs densely.  It really makes me feel that spring has come.

オリジナル勉強風呂Gu 第853回 2023.7/19

古文研究法153-10 芭蕉:山路来て何やらゆかし菫(すみれ)

独り山道をたどっていると何だかほのぼのと心惹かれることがあるのだが、それが何であるかは我ながら意識には登らない。ふと見ると道端に可憐なスミレが咲いている、私のほのぼのとした思いを迎えるかのように。

N君:有名な句です。この訳文がまたすごい。「私のほのぼのとした思いを迎え入れるかのように」というところは普通は考え付きません。「ゆかし」は「見たい、聞きたい、触りたい、興味が惹かれる」の意ですが、この形容詞一語をここまで膨らませて解釈しているのがスゴイと思いました。

Going through a hillside road one day in spring, I was captured in a slightly comfortable feeling.  What is the origin ?  I found a violet blooming inconspicuously as if she would try to accept my arrival favorably.

S先生:とても良いのです。第1文の I was captured in a slightly comfortable feeling「ちょっとした心地良さにとらわれた」もよいが、I lost myself in a slightly comfortable feeling「心地良さにうっとりした、ボーとしてしまった」という手もあります。

Following a mountain path, I felt myself attracted by something I did not know.  Then I happened to see a pretty violet blooming by the roadside.  It lookes as if it were were receiving me with a tender feeling.