2021-04-07から1日間の記事一覧
桐壺46:一の宮を見奉らせ給ふにも、若宮の御恋ひしさのみ思ほし出でつつ、したしき女房・御めのとなどを遣はしつつありさまを聞こしめす。 帝は弘徽殿女御の生んだ一の宮を御覧になるにつけても、桐壺更衣の生んだ若宮のことを恋しく思い出すばかりで、親し…
桐壺45:「亡きあとまで人の胸飽くまじける、人の御おぼえかな」とぞ、弘徽殿などにはなほ許しなう宣ひける。 「まったく死んだ後まで人の胸をうっとうしくさせるあの女への、帝の御執心だこと」などと弘徽殿女御の周辺ではなお許すことなく言い募るのであっ…
桐壺44:ほどふるままにせむかたなう悲しうおぼさるるに、御かたがたの御とのゐなども絶えてし給はず、ただ涙にひぢて明かし暮らさせ給へば、見たてまつる人さへ露けき秋なり。 そうして日数が過ぎて行く間も帝はどうしようもない悲しみにうちひしがれて、他…
桐壺43:はかなく日ごろすぎて、のちのわざなどにもこまかにとぶらはせ給ふ。 なすところなく日数が過ぎ、七日毎の法要などにも帝は欠かさず御弔問なされた。 N君:The days passed in vain after the funeral. The Emperor never failed to attend the post…
桐壺42:「なくてぞ」とは、かかる折りにやと見えたり。 人々は「あるときはありのすさびに憎かりき なくてぞ人は恋しかりける (生きている時は生きているというだけで憎たらしい気がしていたものだが、いざ亡くなってみると今更ながらに悲しく思われるなあ…
桐壺41:さまあしき御もてなしゆゑこそ、すげなうそねみ給ひしか、人柄のあはれに情ありし御こころを、うへの女房なども恋ひしのびあへり。 帝のあまりに理不尽な御寵愛が度を越していたために、皆桐壺更衣のことをわけもなく恨んだのであるが、ありし日の彼…