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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第769回 2023.4/26

古文研究法126-2 更級日記より:(命婦)「御前のをおろしたる」とてわざとめでたき草子ども硯(すずり)の箱の蓋に入れておこせたり。嬉しくていみじくて夜昼これを見るよりうちはじめ、またまたも見まほしきに、ありもつかぬ都のほとりに誰かは物語求め見する人のあらむ。

命婦は「宮様のお手元にあった草子を頂いたんです」と言って大変立派な綴じ本を何冊も硯箱の蓋に入れて私の元へよこしてくれた。私は嬉しくてたまらず、昼も夜もこの草子が目に入るやいなや読み始め、どんどん読みたいと思った。まだ住み慣れない都で、いったい誰が物語を探して読ませてくれるような人があろうか、そのような人の居る私は幸せ者だ。

N君:筆者(菅原孝標女、すがわらたかすえのむすめ)は、紙がまだ貴重だった時代に東国の田舎に住んでいて、とても「源氏物語の草子」を入手することなどできなくて、母や姉が覚えていた物語を口語りで聞かされただけであったと考えられます。そのような少女がついに上洛して、現実に物語の草子を手にした喜びはいかばかりであったろう、と推察されます。この平安時代、人に物を差し出す時には硯箱の蓋を盆のように使うのが習慣だったようです。副詞「わざと」は、現代語の「故意に」とは違って、「わざわざ」とか「特に」のような意味です。昔と今とで意味が違ってしまった単語です。「ありもつかぬ都」は「縁故の乏しい都、住み慣れない都」くらいの意味です。

Myobu carried me a number of gorgeous books placed on the lid of an inkstone case, saying, "These are given to you from Sanjo-no-Miya."  Overwhelmed with joy, I was absorbed in reading through the book every time I saw it.  How happy I was because I had a precious person kind enough to let me undergo such a splendid experience although it had not been very long since I came to Kyo !

S先生:今回も色々指摘します。第1文「これは三条宮から頂いたものです」の These are given to you ~ は特に間違いではないのですが、These have been given to you ~ のほうが感じが出ます。「あいつが死んで10年になる」と言いたい時、It is ten years since he died. でもよいのですが、It has been ten years since he died. のほうが感じが出ますよね。同じく第1文の from Sanjo-no-Miya は by Sanjo-no-Miya でも良いでしょう。第2文の read throught the book every time ~ ですが「目にする度に一つの本を読了する」つまり「1冊の本を何回も読む」の意になってしまいます。ここでは源氏物語は複数の巻に分かれているのですから、read through each book every time ~ とするのが良いでしょう。こうすることで「目にする度に一つ一つの本を読了する」の意になって原文に近づくと思います。第3文の長い感嘆文ですが、How happy I was because ~ の because を that に変えましょう。because のままだと硬すぎて感嘆文に合いません。that にすることで「~なんて、わたしはなんて幸せなんだ!」となります。このように「感情を表す形容詞の後に来る that 節」は「~なんて」「~とは」の意味を表します。例文を挙げておきましょう。I am glad that you like it.「君がそれを好きだなんて僕は嬉しいよ」。I am very sad that my best friend passed away.「一番の親友が死んで僕は悲しい」。I am surprised that you say such a thing.「君がそんなことを言うなんてビックリだ」。ここのN君の作文では I was very happy that I had ~ が感嘆文になっただけであって、because は全くお呼びでない、のです。感嘆文つながりで一つ言いたいことがあるので今言っておきます。たとえば How heavily it rains !「なんて激しい雨なんだ!」の heavily が省略されて How it rains ! と書かれることがあります。同じように How much I hate him !「あいつがメチャクチャ嫌い!」の much が省略されて How I hate him ! と書かれることがあります。感嘆文において程度の凄まじさを表す副詞が省略されて簡潔な形になるのはよくあることで、簡潔なだけに意味が強くなります。

Saying that those were the books the Prince had treasured, Myobu handed me beautifully bound ones, putting them on the lid of an ink stone case.  I was so delighted that as soon as I saw them, I got to reading them, determined not to stop reading until I was finished with them.  I had not yet been used to living in Kyo, but how happy I was that I had such kind persons as to look for the Tale for me and give it to me !

N君:先生の第2文に出て来た get to+動名詞 はどういう意味ですか? これに続く determined 以下は分詞構文ですよね。

S先生:get to+動名詞 は「~に取り掛かる」くらいの意味です。動名詞のところは普通の名詞でもよいです。不定詞にしないように気を付けて下さい。determined ~「~を心に決めて」は分詞構文です。

N君:先生の第3文の be used to+動名詞「~に慣れて」は有名なやつですね。

S先生:この形も動名詞のところを普通の名詞にしてもよいですが不定詞はいけません。be accustomed to+動名詞 も同じ意味です。I was accustomed to walking to the station every morning.「毎朝駅まで散歩するのには慣れっこだった」。

N君:同じく第3文後半に出て来た I has such kind persons as to do は、「私には~するくらい親切な人々が居た」と考えてよいですか?

S先生:よいです。such ~ that ~ とほぼ同じですが場面場面によって訳し方を微妙に変えていけばよいでしょう。He was in such bad health as to be obliged to resign.「やめなければならないくらい健康状態が悪かった」。He was in such bad health that he was obliged to resign.「健康状態が悪かったので仕事をやめなければならなかった」。話は少しずれますが、ここで such kind person ではなくて such kind persons と複数形にした訳は「命婦だけではなくて三条宮も居たから」です。