kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第642回 2022.12/19

古文研究法68-3 徒然草216段より:(最明寺入道、接待を受ける側)「年ごとに給はる足利の染め物、心もとなく候」と申されければ、(足利左馬、接待する側)「用意し候」とて、いろいろの染め物三十、前にて女房どもに小袖に調(てう)ぜさせて、後に遣(つか)はされけり。その時見たる人の近くまではべりしが、語りはべりしなり。

最明寺入道が「毎年頂戴する足利の染め物が待ち遠しいことです」とおっしゃったところ、足利左馬は「用意してございます」と答えて、さまざまな染め物三十反を、面前で女房たちに小袖に仕立てさせてあとから届けた、とのことだ。その時見ていた人で最近まで生きていたがそのように話しました。

N君:形容詞「心もとなし」は現在であれば、不安だ、頼りない、のような意味ですが、昔は「待ち遠しい」でした。「近くまではべりしが」は本当は「近くまではべりし人が」であって、「過去き連体し」の後に「人」が省略されています。このパターンはこれまで何度も経験したので慣れてきました。さて、この文章は「女房ども」が、最明寺入道の配下なのか、それとも足利左馬の配下なのか、によって解釈が異なってきます。【A案】「女房ども」がもしも最明寺入道配下だったとしたら、、、、足利左馬は最明寺入道のみならず女房どもをも接待する必要があります。ゆえに、足利左馬は自分の家の召使い達に命じて女房どもの採寸をして小袖を作ってあげた、となる。【B案】「女房ども」がもしも足利左馬配下だったとしたら、、、、足利左馬+女房ども が最明寺入道を接待したことになります。ゆえに、足利左馬は自分のところの女房どもに命じて小袖を縫わせて、それを後日、最明寺入道に届けさせた、となります。小袖は女性が着るものですから、そんなものを最明寺入道自身がもらっても困るわけですが、最明寺入道はもらった小袖を自由に使えるわけですから、このパターンもあり得るでしょう。

Lord Saimyoji said, "I am looking forward to the cloth dyed in Ashikaga which you present me every year."  Hearing that, Ashikaga-no-Sama answered, "Of course, I have prepared it."  I hear Ashikaga-no-Sama made sewers tailor lots of Kosode outfits for Lord's women-in-waiting in front of him and afterward sent the clothes to them.  That is true.  An old man, who witnessed the scene and lived until recently, said so.

僕はA案で書きました。足利左馬が縫い子に命じて、最明寺入道配下の女房どもあてに小袖をプレゼントした、というふうに作文しました。

S先生:英文としてはまずまずの出来だと思いますが、解釈としては私はB案を採用したいと思います。足利左馬が、最明寺入道ではなく自分の面前において、自分の家の女房どもに命じて小袖を仕立てさせ、それを後から最明寺入道あてに届けた、と考えました。

Lord Saimyouji said, "Every year I gratefully accept your present, the cloth dyed in Ashikaga.  I am dying for it."  Ashikaga-no-Sama promptly answered, "I am getting it ready."  He had his ladies-in-waiting sew thirty rolls of cloth to make kosode just in front of him and sent them to Lord Saimyouji.  It was told by a man who had seen it directly and passed away a few years ago.

N君:先生の第2文 I am dying for it.「死ぬほど欲しい、のどから手が出るほど欲しい」は、前文の dye に引っかけて作文したのですか?

S先生:少々こじつけた感じもありますが、しゃれてみました。研究社の辞書から例文を拾っておきましょう。I am dying for a drink.「飲み物が欲しい」。She is dying to go on the stage.「俳優になりたがっている」。

N君:先生の第5文末 passed away a few years ago の ago-before 問題についてもう一度解説お願いします。

S先生:筆者あるいは話者が、現在の時点から見て昔のことを言っている場合は ago を使います。ここでは ago ですね。しかし、過去のある時点から見てさらに昔のことを言っている場合には before を使います。再び研究社の辞書から例文を拾います。I saw him two months ago. では、現時点から見て「2か月前に会った」と言っています。一方、I told her that I had met John two months before. では「彼女に話した時点」という過去から見て「それよりも2か月前に会った」と言っています。ややこしいですね。ついでと言ってはなんですが、before については、long before と before long の違いについてもここで解決しておきましょう。みたび研究社の辞書から例文を拾います。She said that she had arrived there long before.「とっくの昔に着いていた、と言った」。We shall know the truth before long.「じきに知るだろう」。この before long は soon とほぼ同じですね。ややこしいと感じるでしょうが、使っているうちに慣れます。