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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第542回 2022.9/11

古文研究法7 枕草子:九月九日(ながつきここのか)は暁(あけ)がたより雨少し降りて、菊の露もこちたくそぼち、おほひたる綿などもいたく濡れ、移しの香ももてはやされたるつとめては止(や)みにたれどなほ曇りて、ややもすれば降り落ちぬべく見えたるもをかし。

重陽節句九月九日は明け方の前頃から雨が少し降って、菊に置く水滴もひどくたまって花にかぶせた綿なんかも大変濡れて、その綿に移った香りも珍重されているになると雨はやんでいるがやはり曇ってどうかするとポツポツと降ってくるに違いないような具合に見えているのも趣がある。

N君重陽節句の日に菊の香りを移した綿で体を拭くと元気で長生きすると信じられていたようです。平安時代の迷信 superstition です。「こちたし」は「言痛し」から来た形容詞で「ゴタゴタと数が多くてやりきれない、うるさい」という意味ですが、本例のように連用修飾で使われる場合には元の意味が薄くなって「単に程度の甚だしさ」だけを表現するようになります。この点は小西先生も度々強調していました。たとえば、あいなし・いみじ・かしこし・いたし、のような心情形容詞が連用修飾で使われている場合は元の意味がなくなって「たいそう」という意味になってしまう、とのことでした。現代の形容詞「恐ろしい」「ひどい」・形容動詞「馬鹿だ」が「おそろしく」「ひどく」「ばかに」の形で使われた時には、元の意味を失って単に程度の甚だしさを表すようになっています。動詞「そぼつ」は、そぼ降る雨、という言い方もある通り「濡れる」の意です。「もてはやす」は「珍重する、大切にする」の意。「つとめて」は「早朝」です。

It started to drizzle before the dawn on September the 9th.  The flowers of chrysanthemums were dripping wet.  The cotton covered on them was soaked with the rain, too.  It is the custom for people to make much of the lingering scent on the cotton from the flowers.  Although it stopped raining in the morning, dark clouds remained in the sky as if they were about to draw another shower within any minute.  I think that the autumn weather is attractive because of its obscurity, or rather, unstableness.

S先生:今回は出来がよくないです。冗長かつ説明的に過ぎる、とでも言いましょうか。うわべの表現、という意味においてはまずまずなのですが、どうも堅苦しい感じが抜け切れていません。第1文の before the dawn ですがここは定冠詞不要です。before dawn, at dawn のように無冠詞で使います。これはもう使い慣れていくしかありません。同じ第1文の「9月9日」ですが September the 9th という言い方は会話表現であって、文章で書く時にはちょっと堅く the ninth of September としましょう。綴りは nineth ではなくて ninth なので気を付けて下さい。第4文の It is the custom for people to do という言い方は堅すぎていけません。この構文を生かすなら It is people's custom to do ですがこれもやはり不自然です。こういうところは People usually do という普通の形で良いのです。肩の力を抜きましょう。同じく第4文末の from the flowers は不要でしょう。この綿が、既に菊の花から香りが移った綿であることは分かっているので、このように too explanatory なものは嫌われます。第5文の as if 節の中にある動詞 draw「引っ張る」は、気持ちは分かるがやや奇異な感じを受けるので bring 「連れて来る」くらいにするのが良いでしょう。その後にある副詞句 within any minute が問題です。この within は使うなら in のほうが良いですが、いっそのこと前置詞を除外して any minute にしてしまうほうがスッキリすると私は思います。最後の第6文で全体をまとめたつもりでしょうが、どうもいただけない。やはり too explanatory と言うべきです。今回は小言が多くなってしまいましたが要するに「簡潔で締まった文章を書いてくれ」ということです。

A light rain began to fall at dawn on the ninth of September.  The waterdrops on the chrysanthemums made their cotton deeply wet.  The fragrance permeating into the cotton is valued highly by everyone.  It stopped to rain in the morning, the sky was still covered with clouds.  It looks as if it is going to sprinkle again any minute, which has something attractive enough to make us fascinated.  

N君:先生の作文の第5文 It looks as if it is going to do ですが、 as if 節の中にある is は正しくは were ですよね。

S先生:It looks as if it were going to rain. というよく見る文章の意味は「一雨来そうな空模様だ」ですが、話者(筆者)は心のなかではこれっぽっちも雨が降るとは思っていません。降雨確率0%と思いながら発言しています。これが仮定法の本質です。さて私の作文では It looks as if it is going to rain. と書きましたが、ここでは話者(筆者=清少納言)は降る可能性80~90%と思いながら発言しています。仮定法ではないのです。訳文は同じ「一雨来そうだ」ですが内容は全く違っていて、話者の心中は、were なら降雨確率0%、is なら降雨確率80%なのです。

N君:仮定法へのおぼろげな理解が少し進んだ気がします。