kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第487回 2022.7/18

百人一首No.65 相模(さがみ):恨みわび干さぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ

悩んだ末にもう恨む気力も失って、涙を乾かす間もない袖でさえ惜しいのに、ましてや、この恋ゆえに世間に浮名を流して朽ちてしまうであろう我が名が惜しいことです。

N君:下句は分かるのですが上句との関係が分かりません。

Having lost the vitality to hold a grudge against you, I can find no time to dry my sleeves wet with tears. I am regretful that my name will be injured by the scandalous rumor.

S先生:第2文冒頭の I am regretful that ~ は、It is regrettable that ~ でもよいでしょう。主語と形容詞の組み合わせに注目して下さい。もっと意味を強めて It is all the more regrettable that ~ という感じで作文するのも良いでしょう。

Having lost my vigor to blame you, I am very sad that my name will be disgraced by the rumor of our love affair.  Ah, my sleeves are too wet with tears to dry.

MP氏:My sleeves will never dry with all these bitter tears of unrequited love.  But even worse, the regret of having lost my good name ー tainted by this love.

N君:unrequited「報われない」、unrequited love「片思い」。taint には他動詞「汚す、感染させる」と自動詞「汚れる」があります。MP氏の作品で使われた taint ですが自動詞と考えれば文法的には特に問題ありません。でもなんとなく、be動詞が省略されていて、この tainted は他動詞の過去分詞であるような気がします。

S先生:久しぶりに英作談義をやります。今回は以前やったような大きなテーマではなくて、細かい事項を3つ挙げて解説していきます。

(1) catch + O + ~ing「Oがよからぬことをしているところを見咎める」。これは目撃する、の意であって、捕まえる、の意ではありません。The teacher caught the student cheating in the exam. では先生は目撃しただけで捕まえたわけではありません。The policeman arrested him for drunken driving. ではちゃんと捕まえてます。

(2) 他動詞の walk には I will walk you to the station.「駅までお供します」のような使い方があります。あまり見かけませんが一応知っておきましょう。

(3) given「~を仮定すれば、~が許されるなら」には前置詞用法と接続詞用法があります。研究社の辞書から例文を拾ってみます。Given good weather, the thing can be done.「天気さえ良ければできる」。Given that the radius is 5 meters, find the circumference.「半径5メートルの時円周を求めよ」。

K先輩:本歌は2つの点で難しいと思います。第1は「動詞連用形+わぶ」=「思い通りにならずに悲観してその行為をやり通す気力を失ってしまう」の意です。古語辞典によると「物事が思い通りにならなかった事情を相手に話す」という意が派生して、現代語の「詫びる」に繋がったとのことです。言葉は生きて動いているんだな、と思います。第2は副助詞「だに」です。要するに現代文で使う「さえ」が、古文では用途によって「だに」「すら」「さえ」を使い分けるらしいのですが、難しすぎて私にはその区別が分かりません。そんなことよりも本歌では「だにあり」が大切です。これは特別な用法で、最終述部の”惜し”を補って「~さえ惜しいのに」と訳します。これを”陳述の「だにあり」”と呼んでいて、英語に直すと even be +(形容詞) ということになります。補語としての形容詞を持ってくるのです。補語complement は「補足して完全にするもの」の意で、研究社の英和辞典には Good music is the complement of a lively party.「良い音楽があってこそパーティーは盛り上がる」という例文が出ていました。これは名文だと思います。complement がページの左上にあって、同じページの右下にはcompliment「お世辞」がありました。e と i が違うだけで発音は全く同じです。こういうペアを同音異義語と呼んでいます。complement と compliment の区別がつかなくなった時には、私は英和辞典のこのページを画像として思い出すことにしています。同音異義語を思いつくままに挙げてみましょう。sore(ヒリヒリ痛い)ーsoar(舞い上がる)、vain(無益な)ーvein(静脈)、fair(公正な)ーfare(運賃)、meat(肉)ーmeet(会う)、tale(話)ーtail(尾)、himーhymn(讃美歌)、feetーfeat(手柄・偉業)、airーheir(相続人)、flowerーflour(小麦粉)、soul(魂)ーsole(足裏・唯一の)、rainーreign(君臨)、などなど。スペルは同じなのに意味は全く違う、というペアもあります。たとえば sewer を、ソウアと読めば「縫う人」ですが、スーアと読めば「下水道」です。こういうのを集めるのも楽しいものです。