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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第478回 2022.7/9

百人一首No.56 和泉式部:あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今ひとたびの逢ふこともがな

(私は今はまだ生きているがしばらく後には)死んでしまうでしょう、その「この世の外(あの世)」への思い出として、(死ぬ前に)もう一度あなたにお逢いしたい。

N君:女性からの情熱的な歌ですね。

I will soon depart from this world.  So I would like to make a tryst with you once again as my dearest memory to the Heaven.

S先生:すっきり書けています。いつもの持って回った感じがありません。

I will soon pass away.  How I wish I could see you again as a memory to take to the next world with me !

MP氏:As I will soon be gone, let me take one more memory of this world with me.  I hope against hope to see you one more time, to see you now.

N君:MP氏の作品の第2文は「もう一度会える見込みがあるのかないのかなどということではなくて、今逢いたいのです」という意味なのでしょうか。文末の now が斜体になっているのでここを強調しているのだと思います。

K先輩:天暦の治で有名な村上天皇の息子が冷泉天皇、その息子が為尊・敦道親王です。和泉式部は初め兄為尊親王と恋仲だったのですが、彼は若くして亡くなってしまいました。ところがその後、和泉はこともあろうに弟敦道親王と付き合い始めたのです。恋多き女和泉式部 ですね。一条天皇中宮であった彰子のサロンで和泉と毎日顔を合わせる紫式部は、和泉よりも5歳年長で「お姉さん的存在」だったわけですが、日記に「和泉はけしからぬかたこそあれ」と記しています。二人は共に美人で才能豊かでしたが、性格は正反対で「紫式部は真面目・和泉式部は奔放」でした。百人一首の中の女性歌21首は一般に本歌のような激しい恋の歌がほとんどですが、その中にあってNo.57紫式部の冷静な歌いぶりは注目に値します。性格的にキチッとした紫式部から見ると、恋の遍歴華やかなりし和泉式部のことがみだらな女に見えたのでしょう。和泉は最終的には橘道真(たちばなのみちさだ)という国司レベルの中級貴族と結婚して丹後国へ赴任しました。丹後国は現在の京都府の北方で天橋立があるあたりです。娘=No.60小式部内侍 を京に残しての丹後行きは面白いエピソードを生みますがその話はNo.60=第482回までとっておきましょう。

さて和泉と言えば洛北の貴船神社です。京都市の北東にある出町柳の駅から叡山電車に乗り換えてさらに北へ向かうと、北東の比叡山へ行く経路と北西の鞍馬山へ行く経路に分かれます。鞍馬山の方向へ進むと、終点が鞍馬山ですがその一つ前が貴船口です。鞍馬山まで行って電車を降り、ケーブルカーで鞍馬山に入り、山を登って本堂に参った後、さらに分け入っていくと、義経が天狗と一緒に修行した木の根の道があり、さらに進むとだんだん下り道になり沢へ出て、最終的に貴船神社へ至ります。貴船神社は山から水がしみだしてくる水源の位置にあって、水の神様です。おみくじを引くとそのままでは文字がなく、水に浮かべて初めて文字が浮き上がってきます。夏に貴船へ行くと最高です。水しぶきを上げる渓流の上に竹製の川床がかかっていて、この上に座って飲むビールが旨いのです。夜になると蛍が美しい。その貴船神社和泉式部の歌が残っています。夫道真の浮気に悩む和泉は貴船の神様に「もの思へば沢の蛍も我が身より あくがれ出ずる魂(たま)かとぞ見る」と訴えました。あくがれいずる、というのは「さまよってフラフラ出て来る」くらいの意味です。自分の心の底にあった懊悩が蛍となって彷徨い出て来たかのようだ、と歌ったのです。彼女がこの歌を詠んだ時に不思議なことが起こりました。神社の奥の方から男の低い声で「奥山にたぎりて落つる滝つ瀬の 魂散るばかりもの思ひ」と返歌があったのです。「名詞+な+動詞連用形+そ」は禁止を表すので覚えておいて下さい。「心が砕けるほどにそんなに悩んではいけないよ」と、貴船の神様が和泉にアドバイスをくれたのです。これが効いたのか、その後二人は仲睦まじく暮らしたそうです。

冬に、石段や灯籠の雪景色を見るのも良いですが、すべって怪我をしてもいけないし、やはり「貴船は運動靴を履いて夏に行くのが良い」と私は思います。右源太、左源太などの料理屋さんが川床をやっているので、経験してみることをお薦めします。