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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第399回 2022.4/21

帚木310・311・312・313・314:慰め難く憂しと思へれば、(源氏)「などかくうとましきものにしもおぼすべき。おぼえなきさまなるしもこそ、契りあるとは思ひ給はめ。むげに世を思知らぬやうに、おぼほれ給ふなむ、いとつらき」と恨みられて、(女君)「いとかく憂き身の程定まらぬ、ありしながらの身にて、かかる御心ばへを見ましかば、あるまじき我だのみにて、見なほし給ふのちせをも、思ひ給へ慰めましを、いとかう仮なる浮き寝の程を思ひ侍るに、なぐひなく思ふ給へまどはるるなり。よし今は見きとかけ」とて、思へるさま、げにいとことわりなり。おろかならず、契り慰め給ふこと多かるべし。

そしてこんな結果になったという事が慰め難く辛く思われて、源氏は「どうしてあなたは私のことをこんなにも疎ましい男だとお思いになるのです。いかに思いがけないことだったとしても、その成り行きを、前世からの約束があったのだと、そんなふうにお思い下さるわけにはまいりませんか。世間知らずの娘のように、悲しみに沈みきっておられますのは、私としてもなんとも辛いことでございます」としみじみ恨み言を言った。すると女君は「いえ、もしも私がまだ、こんなつまらぬ身の上に沈む前の衛門督の娘でございました時分に、お情けを頂戴いたしましたら、とんでもないうぬぼれかもしれませんが、幾度かお目にかかるうちには、やがて見直していただける時もあったかもしれないのに、と自らを慰めもいたしますが、現実には、こんな身になってからの、ほんのかりそめの逢瀬だと思いますと、ただもう心惑いするばかりでございます。ええ、もう結構でございます。どうか、こうして私を見たとさえ口にして下さいますな」と言って、ひたすら悲しんでいる様子だったが、それも思えば道理であった。それでも源氏は懇篤に将来を約束したりして、女を慰めようとさまざまにかき口説いた。

N君:反実仮想の「ましかば~まし」と、禁止の「な~そ」が出ました。それにしてもご両人のセリフの長さには辟易します。

Feeling a deep grief about his failure as a result, Genji complained bitterly, "Why on earth do you consider me as such a loathsome man ?  Even if today's affair was quite an unexpected one for you, I would like you to regard it as the result of our fate from the former life.  I am sad to see you lost in sorrow as if you were a naive girl."  "You are wrong. If you had given me kind words when I was a daughter of Emon-no-kami, I could have accepted your love as we met several times.  You could also have discovered my good point, though it may be a conceit of mine.  Now that I have sunk into the low rank as a second wife of Iyo-no-suke, I am just bewildered by your words because it is only a transient tryst.  Well, that might be enough.  Please don't say to anyone that you have met me here."  She was apparently grieving from beginning to end, but it stands to reason that she behaved so negatively.  Nonetheless Genji managed to console her in various ways and talk her into accepting his love by securing her future.

S先生:長いセリフでしたね。全体的に見て無難にまとまっていると思います。第3文の I would like you to regard it as ~ は、もっとはっきりと you should regard it as ~ と言い切ってもよかったと思います。第4文の see you lost in sorrow「悲しみの中で茫然自失しているあなたを見る」はかなり高級な言い方でした。過去分詞lost がこのように使われることは重要で、出題者が好みそうなポイントです。第8文の接続詞 Now that「いまや~なので」も正しく使うことができました。第12文では、manage to do「がんばってなんとか~する」、talk+人+into+動名詞「人を説得して~させる」をちゃんと使えています。採点者をアッと驚かす斬新な構文が皆無なのは寂しいですが、試験の現場ではこのような「正しくて面白味に欠ける作文を書く」ということも大切なことです。これはN君を批判しているわけではありません。試験の本当の怖さを知った時に、私のこの言葉の意味も分かるでしょう。要するに、「試験の現場では、emotion に巻き上げられてカッコつけた作文をしてはダメ」ということを強く言いたいのです。

Regretting this unhappy result, Genji blamably said to her, "Why do you think that I am so detestable a man ?  Your encounter with me must have been unexpected to you, but shouldn't you think it was the one we were fated for ?  I am sad to see you deeply depressed.  You look as if you knew nothing of the world."  "When I was a daughter of Emon-no-kami, I was not in such a low rank as I am in.  If you had shown your compassion for me before I came to this poor situation, I might have consoled myself at the thought that you would think fondly of me someday.  Am I full of self-conceit ?  I am just perplexed by the reality that you are going to have a transient tryst with me.  Well, it is over.  Please don't say to anybody that you have met me."  She just looked very sad.  It was not unreasonable.  Still, Genji continued giving kind words with which to console her.

N君:僕の目から見て気になった箇所を挙げてみます。まずは第2文の so detestable a man の語順に注目したい。形容詞が so に引っ張られて前に出たので、その後に定冠詞と名詞が来ています。第6文の I was not in such a low rank as I am.「昔は今のように賤しい身分ではなかった」の as は関係代名詞ですね。such に引っ張られて出てきたと思います。最後の第14文の with which to do の形は、関係代名詞which が出ているのに、節としての S+V を兼ね備えていない形です。本来なら which のすぐあとに he tried くらいがあってもよさそうだし、僕なら多分そう書くと思います。ここの S+V をなくしたことで軽くなった気がします。

S先生:いいところを衝いていると思います。前置詞+関係代名詞+to do は、実は硬い文語体の「不定詞の形容詞用法の変形」と考えられます。たとえば a house to live in と言えば済むのにわざわざ a house with which to live と書いたようなものです。あるいは I have no friends to depend on. と言えば済むのにわざわざ no friends on whom to depend と書いたようなもので、その本来の姿は no friends (whom) I should depend on でしょう。N君は S+V がなくなって軽くなったとか言ってましたが、本当のところは「硬くなった」というのが合ってます。時にこのような文体も混じっているので、文法的な解釈を常に考える習慣をつけておくことは重要です。たとえその時の理解が間違っていたとしても、将来その間違いに気づいた時のインパクトが大きくて、そのため以後間違わなくなります。