kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第354回 2022.3/7

帚木164・165・166:(中将の言葉続き):まだ世にあらば、はかなき世にぞさすらふらむ。あはれと思ひし程に、わづらはしげに思ひまどはす気色見えましかば、かくもあくがらさざらまし。こよなきとだえおかず、さるものにしなして、ながく見るやうも侍りなまし

まだどこかで生きているなら、かわいそうに、きっとさぞ辛い思いをしてさまよっているんだろうな。私があいつを可愛がっていた頃、もっとわずらわしいほどにまとわりついたりする様子が見えたとしたら、私もいくらかは彼女の苦しみを察していたかもしれないし、こんな悲しい目には遭わせずに済んだでしょう。で、もっと、キチンキチンと通って行って、しかるべき妻の一人として長く面倒を見てやるということだってできたでしょうに、、、。

N君:中将の後悔の言葉が続いています。

Supposing that she is still alive somewhere, she must be wandering from place to place in distress.  When I was on friendly terms with her, if she looked eagar to cling to my legs,  I might have guessed a part of her grief.  If I had been more careful about her, I might have protected her from having such a bitter experience.  If I had visited her more often, and looked after her as one of my wives for a long while、、、.

S先生:第2文では、when節とif節が夫々独立した副詞節になっているわけですが、感心しません。if節を主節最後尾の grief の後に置けば落ち着くでしょう。あるいは、when以下を if節最後尾の後に続けてif節の一部とする方法もあるでしょう。とにかく両者を並列にするのはいけません。それから if節の中味「彼女が熱心に私の脚にまとわりつこうとしているように見える」は、あまりにも原文にひっぱられた英訳で、読んだ人は一瞬「どういう意味?」と思うでしょうね。時制も仮定法過去完了を使う方がよいので、たとえば、if she had hung me about, くらいでどうでしょうか。この about は前置詞ではなく副詞で、around とほぼ同じ意味です。結局第2文は、When I was on friendly terms with her, I might have guessed a part of her grief if she had hung me about. となります。このようにやっても、なんとなく回りくどい感じは抜けきれないが、N君のオリジナルよりはいくぶんマシになります。

If she were still alive somewhere, she would be straying about here and there deeply distressed.  I cannot but feel sorry for her.  If she had followed me about persistently at the time I loved her, I might somewhat have noticed her distress without putting her in such a sad situation.  If I had visited her more regularly, I could have treated her with more love as one of my wives for a long time.

今日は早めに終わったので英作談義をやります。「seem と appear の違い」について語ってみましょう。It appears that he quit the job.  と、It seems that he quit the job. はほとんど同じですがちょっと違います。appear のほうは「客観的・外見的」なので、話者は「彼が上司ともめた」とか「彼の身なりがみすぼらしい」などの情報を持っていて、それをもとに判断している、という感じが伝わってきます。それに比べて seem のほうは「主観的・情緒的」なので、話者は何もちゃんとした判断基準を持っていないけれども、なんとなくそんな感じを持っている、という意味になります。ここから脱線して、話のテーマが変わってくるのですが、もう少しお付き合い願います。「彼は仕事を辞めたらしい」と言いたい時に、I hear (that) he quit the job. と作文する人もいるでしょうし、それで何の問題もないのですが、まれに、見る聞く動詞+目的格+原形不定詞 を使って、I heard him quit the job. のような作文をする生徒がいます。この文をそのまま訳すと「彼が仕事を辞める音を聞いた」となってしまうので、こういう文はあり得ないのです。ちなみに quit-quit-quit なので、前者は過去形、後者は原形不定詞です。さらに脱線して likely について考えてみましょう。「likely は未来を表す」ので、He is likely to quit the job.「彼はなんだか仕事を辞めそうだ」はあり得るとしても、He is likely to have quit the job. は不自然です。最後に副詞apparently「見たところ聞いたところによるとどうも~らしくて」は 、It appears that ~ と同様に「ある程度の客観性を持った予想」の時に使われます。以上見て来たように「どうも~らしい」という言い方にもいろいろなことが潜んでいますね。