2021-10-05から1日間の記事一覧
帚木161・162:(中将の歌)『咲き混じる色はいづれと分かねどもなほ常夏に如(し)く物ぞなき』大和撫子をばさしおきて、まづちりをだになど、親の心をとる。(女)『打ち払ふ袖も露けき常夏に嵐吹き添ふ秋も来にけり』と、はかなげに言ひなして、まめまめしく恨…
帚木159・160:(源氏)「さてその文の詞(ことば)は」と問ひ給へば、(中将)「いさや、ことなることもなかりきや。(女)『山がつの垣ほ荒るとも折々にあはれはかけよ撫子の露』 思ひ出でしままにまかりたりしかば、例のうらもなきものから、いと物思ひ顔にて、荒…
帚木156・157・158:(中将の言葉続き)親もなくいと心細げにて、さらばこの人こそは、と、事にふれて思へるさまも、らうたげなりき。かうのどけきにおだしくて、久しくまからざりし頃、この見給ふるわたりより、情けなくうたてあることをなむ、さるたよりあり…