2021-04-09から1日間の記事一覧
桐壺59:(帝の手紙続き)いはけなき人をいかにと思ひやりつつ、もろともにはぐくまぬおぼつかなさを、今はなほ昔の形見になずらへてものし給へ」などこまやかに書かせ給へり。 幼い赤ん坊はどうしているだろうと心配しながら、私と桐壺が二人して育ててやれぬ…
桐壺58:(帝からの手紙)「ほど経ば少しうち紛るることもやと、待ち過ぐす月日に添へて、いと忍びがたきはわりなきわざになむ。 「時が経てば少しは悲しみも紛れるのではないかと、紛れる日を待って過ごしてきましたが、ますます悲しみに堪え難くなってくるの…
桐壺57:(母君)「目も見え侍らぬにかくかしこき仰せごとを光にてなむ」とて見給ふ。 「涙にくもって何も見えませんが、かたじけない御言葉を光として拝見いたしましょう」と母君は言って読み始めた。 N君:Kiritsubo's mother said, "Although tears make me…
桐壺56:(命婦の言葉が続く) など、はかばかしうものたまはせやらず、むせかえらせ給ひつつ、かつは人も心弱く見奉らむとおぼしつつまぬにしもあらぬ御けしきの心苦しさに、うけたまはり果てぬやうにてなむ、まかで侍りぬる」とて、御文たてまつる。 という…
桐壺55:(帝から桐壺母君への伝言)『しばしは夢かとのみたどられしを、やうやう思ひしづまるにしも醒むべきかたなく堪えがたきは、いかにすべきわざにかとも問い合はすべき人だになきを、しのびては参り給ひなむや。若君のいとおぼつかなく露けきなかにすぐ…
桐壺54:(命婦)「『まゐりてはいとど心苦しう心ぎもも尽くるやうになむ』と、内侍のすけの奏し給ひしを、もの思う給へ知らぬ心地にも、げにこそいとしのびがたう侍りけれ」とて、ややためらひて仰せごと伝え聞こゆ。 「内侍が『お訪ねいたしましたらそれはお…