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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第559回 2022.9/27

古文研究法18 徒然草:しのぶの浦の漁師(あま)の見る目も所狭(ところせ)、暗(くら)ぶの山も守(も)る人繁(しげ)からむに、わりなく通はむ心の色こそあはれと思ふ節々(ふしぶし)の忘れ難きことも多からめ。親兄弟(おやはらから)許してひたぶるに迎へすゑたらむ、いとまばゆかりぬべし

こっそりする恋愛では人目もうるさくて闇に紛れて訪ねてゆこうにも見張る人が多い ー というような女に無理をして通って行こうという情熱にこそ、男は深く感じ入って忘れられない事も色々と多かろう。しかしながら親兄弟が女との仲を認めて公然と家に迎え入れるような女を、男はたいそう照れ臭く思う違いない

N君:主語・目的語が書かれない文章の解読は大変です。今回は「連体形で終わった時には"~の人”と訳すべきかも」ということを認識しました。そういう意味で古文はまさに暗号解読です。形容詞「所狭し」は「面倒でうるさくてどこか行ってくれ」という感じの語です。姥捨て山のお話で、男の嫁がおばあさんを「ところせがりて」いました。形容詞「わりなし」は 「理無し」ですから unreasonable の意です。「心の色」はここでは「男の情熱」くらいの意味です。形容動詞「ひたぶるなり」は「一途な様子」を表しますがここでは「公然と」くらいの意味でしょう。形容詞「まばゆし」は「照れ臭い」の意。最後の「ぬべし」は以前出た強意の「つべし」とだいたい同じで「~に違いない」くらいの意味です。助動詞を重ねることで単なる推量よりも強い意味になっています。

In a secret love, a man must care about the public eye.  Even if he might attempt to visit his lover under cover of darkness, there are many guards for her.  But he becomes to love her all the more for the difficulty in making a tryst.  It is this strong passion for her that he will be unable to forget her.  On the other hand, he must feel a little embarrassed when his parents and brothers permits him to get married to her. In this case his heart never soars because he can meet her freely.

S先生:今日は言いたいことがたくさんあります。第3文の become to do は変なので come to do の形にして下さい。He became a teacher. とか She became famous. のように become のあとに来るのは名詞か形容詞であって不定詞は来ません。よってここは he comes to love her となります。You will soon come to like this town. のように使います。この第3文は all the more for ~ 「~のせいでかえって」という高度なテクニックを見せてくれたのに簡単な come to do で躓くとは、意外な展開でした。さて次は第4文です。まずN君の原文は It is this strong passion for her that he will be unable to forget her.「男が女のことを忘れられないのは女への強い熱情だ」と書かれていて、形式主語 It が that 節を受けている、と考えればこれはこれで成立するのですが、、、ちょっと不自然です。例えば this strong passion for her の前に because of を持ってきて It is because of this strong passion for her that he will be unable to forget her. とすればすんなり意味が通りますね。しかしこんなややこしいことは抜きにして、強調構文にすると分かり易くなります。It is this strong passion for her that makes him unable to forget her.「女のことを忘れ難くしているのは女への強い熱情だ」「この熱情こそが女のことを忘れ難くしているのだ」となって、こちらのほうがしっくりきます。形式主語や強調構文についてもう一度基本からじっくり考え直してみましょう。

When you secretly love someone, you try to visit her in the dusk so as not to be noticed.  This strong passion that forces you to go to see her in secret shows how deeply and unforgetably you love her.  But if your parents and brothers admit your love and permit her to come to see you freely, it may make you feel embarrassed rather than pleased.

オリジナル勉強風呂Gu 第558回 2022.9/26

古文研究法17-2 源氏物語橋姫:添ひ伏したる人(中の君=次女)は琴の上にかたぶきかかりて「入る日を返す撥こそありけれ。さま異(こと)にも思ひ及び給ふ御心かな」とてうち笑ひける気配、今少しおもりかに由付(よしづ)たり。(大君)「及ばずともこれも月に離るるものかは」などはかなき事をうちとけ宣(のたま)ひ交わしける御気配ども、さらによそに思ひやりしに似ず、いとあはれになつかしうをかし。

何かに寄りかかっていた人(中の君=次女)は琴の上に体を寄せて「入る日を呼び返す撥があるそうですが。変わった風にお考え付きのお方ね」と言って笑う。その様子が先程の大君よりももう少し重々しく深みがある。姉のほうが「扇にはかなわないけれど、撥だって月と全く無縁というわけじゃないのよ」などと言って、なんでもない事を気楽に話し合っている御様子が、想像していたのと違って大変心惹かれ好感を持てて興味深いのであった。

N君:形容動詞「おもりかなり」は「重々しい」、動詞「由付く」は「深い情趣を持つ」、「よそに思ひやりし」は「想像していたこと」くらいの意味です。

The other one of them, the younger, who had been leaning against something, got up over a Koto and said with a smile, "I have heard of a pick which has an ability to call back the setting sun, but never heard of one which can move a moon.  What an eccentric thing you can think up !"  Her aesthetic appearance was a bid deeper than that of her elder sister's.  The elder sister answered, "A pick, although it cannot be equal to a fan, has a slight connection with the moon, doesn't it ?"  The relaxed way they were talking about a poetic feature of the moon looked unexpectedly attractive and favorable.

S先生:まずまずの出来ですが何か所か指摘します。第1文冒頭の The other one of them, the younger, who ~ は分かり切っていることをくどく説明しているので、もっと簡単に The younger lady, who ~ としましょう。同じく第1文の「琴に体を寄せて」の部分ですが get up over a Koto では状況が分かりません。身を覆いかぶせる感じ、なら go up to ~ くらいを使って went up to a Koto としてみてはどうでしょうか。続いて登場の an ability ですが、この語は「人間の持つ能力」を表すのであって、撥が月を呼び返す能力を言う時には不適切です。a power くらいでどうでしょうか。

The younger sister, who had been leaning against something, moved to a Koto and said with a smile, "I hear we can call back the moon by fingering the plectrum of a Koto.  How eccentric you are to think that the moon can be called back by playing the biwa with its plectrum."  Her expression looked a little more dignified than that of her older sister.  She said, "Though a plectrum has less power than a fan, it also has something to do with the moon."  Her casual way of talking was far beyond Genji's imagination.  She attracted him and gave him a good impression.

オリジナル勉強風呂Gu 第557回 2022.9/25

古文研究法17-1 源氏物語橋姫:あまたへ通ふべかめる透垣(すいがい)の戸を少し押し開けて見給へば、月をかしきほどに霧(き)り渡れるを眺めて、簾を短く巻き上げて人々ゐたり。内なる人、一人(大君=長女)は柱に少し居隠れて琵琶を前に置きて撥(ばち)を手まさぐりにしつつ居たるに、雲隠れたりつる月にはかにあかく差し出でたれば「扇ならでこれにても月は招きつべかりけり」とて、さしのぞきたる顔、いみじうらうたげに(にほ)ひやかなるべし。

あちこちへ通じるようになっている透垣の戸を源氏の君が少し押し開けて屋敷の方を御覧になると、中では人々が、月趣深くけぶっているのを眺めながら簾を低く巻き上げて座っていた。そのうちの一人(大君=長女)は柱に少し隠れるような具合に座って琵琶を前に置き撥を手でもてあそんでいた。すると雲に隠れていた月が急に明るく出てきたので彼女は「扇じゃなくてもこの撥できっと月を呼び出せるわ」と言って、ちらっとその顔がこちらへ見えた、その顔はたいそう可愛らしく美しく見えた。

N君:美しい姉妹が月を眺めながら語り合っている様子を源氏が物陰から覗き見している場面です。透垣は「竹や板で作った垣根」の意で「すいがい」という読みも大切です。主格を表す「の」がまた出ました。助動詞「つ」に助動詞「べし」が加わって「つべし」になると普通の推量よりも意味が強くなって「きっと~にちがいない」みたいな意味になります。「強意の”つべし”」と覚えます。形容詞「らうたし」は英語では lovely「可愛らしい」の意です。

Opening slightly the small door installed on the hedge, and looking in the garden, Genji found that two young women were sitting under the eave with the reed screen wound  up a little and appreciating the beautiful moon shrouded in a mist.  One of them, the elder, sitting behind the pillar, was not seen very clearly but seemed to play with the pick of a biwa(japanese harp) with her fingers.  Noticing that the bright moon emerged suddenly from behind the clouds, she said, "I will be able to call back the moon without fail by this pick even if I cannot use a fan."  Her face, which Genji glimpsed when she made the witty remark, looked very pretty and elegant.

S先生:構成は良いですが細かいことが何か所かあります。第1文の付帯状況 with the reed screen wound up a little に使われた wind up は「ぜんまい式の時計を巻く」の意なので、簾を巻き上げる時には wind up ではなくて roll up のほうが合っています。よってここは with the reed screen rolled up a little にしましょう。第1文、第3文に出た月は確かに the moon なのですが形容詞が付くと定冠詞が不定冠詞に変わります。したがって第1文では a beautiful moon、第3文では a bright moon となります。このほかにも a full moon, a new moon, a haif moon などの例もあります。a full moon なのに the sitting sun、これが英語の分からぬ所です。面倒ですが慣れていきましょう。

Pushing open a bamboo door with chinks leading to someplaces to look in the premises, Lord Genji found two ladies sitting under the eaves with a bamboo blind rolled up and looking up at a dreamy moon shrouded in a fog.  One of them, the older, was fingering the plectrum of a biwa in front of her, hiding herself behind a pillar.  Then a cloud-covered moon suddenly began to shine clearly.  The older lady said, "I can tell the moon to come and show herself by playing the biwa with this plectrum.  I don't have to use a fan."  Glancing at her face, Lord Genji found that she was so sweat and beautiful.

N君:chink=crack「隙間、割れ目」、premise「境内、構内」。S先生の第1文に出て来た to look という不定詞は、目的の不定詞とも取れるし結果の不定詞とも取れますね。

S先生:中学の時に習った不定詞の分類からそろそろ卒業して and looking みたいな捉え方をする頃ですね。不定詞にすることで文を締める、という感覚です。

オリジナル勉強風呂Gu 第556回 2022.9/24

古文研究法16-2 枕草子:「物調ぜさせばや」と言へば、「つひに言ひあらはしつる」など笑はせ給ふに、忠隆聞きて台盤所のかたより「まことにやはべらむ。かれ見はべらむ」と言ひたれば、「あなゆゆし、さる者なし」と言はすれば、「さりとも、つひに見つくる機(おり)もはべらむ。さのみ隠させ給は」と言ふ。

私(作者=清少納言)が「翁丸に何か食べ物をこしらえてあげましょう」と言うと、帝付きの女房が「翁丸びいきを白状しちゃったわね、清少さん」などとお笑いあそばす。それを、打ち据えた張本人の蔵人忠隆が聞きつけて台盤所のほうから「本当でございますか、あの犬を見てやりましょう」と言ったので、私は「あらイヤだわ、そんな犬は居ません」と取次の者に言わせると、忠隆は「だっておしまいには私が翁丸を見つける機会もありましょう、そんなに隠しきることもできますまい」と言う。

N君:古文の副詞「つひに」は現代語の「遂に」とは少し意味が違っていて、「最終的には」という感じ。at last ではなくて actually でしょうか。形容詞「ゆゆし」は「忌忌し」つまり「口に出して言うのも憚られるくらいの」の意なので、程度の著しい様子を表現しています。悪い意味のみならず良い意味にも使われるので訳し方の難しい単語です。以前勉強した「会話文に出てくる2重敬語の行動主体は天皇である必要はなくて、会話を交わしている相手のことが多い」を、このエッセイに出てくる会話文「さのみえ隠させ給はじ」確かめることができました。ここでは忠隆が清少に対して会話文の中で2重敬語を使っています。

I said, "I would like to have someone prepare some food for Okinamaru."  Hearing that, one of the ladies-in-waiting who serve the Emperor said with a smile, "You have finally confessed that you had been favoring the dog !"  Happening to hear the conversation, Kuroudo-Tdataka said loudly from the kitchen, "Really ?  I want to look into the dog I hit."  I answered him via a servant, "Your remark is beside the mark.  There is no dog here you should care about."  He replied, "But there will be an opportunity in which I may end up finding it.  You will be unable to keep it out of my eyes."

S先生:種々の語法がふんだんに使われて表現が多彩になってきました。弱い使役動詞 have の構文、happen to do「たまたま~する」、be beside the mark「的はずれで」、end up ~ing「最終的に~する」、keep+O+out of one's eyes「Oを視野の外に置く、Oを目に触れさせない」などなどが出てきました。いずれも適当な使い方になっていると思います。全体的に上出来ですが小言をちょっとだけ言います。第2文で confess の内容を示す that 節の中身の時制について考えてみましょう。you have finally confessed that you had been favoring the dog.  という文です。時制が一致していませんね。that 節の中身は現在形 favor でよいでしょう。考えすぎないよう注意しましょう。第3文の look into「調査研究する」はちょっと言い過ぎな気がします。ここは「犬の具合を見る」くらいの意味なので examine くらいが適当でしょう。

When I said that I would have my servant prepare something to eat for him, one of the ladies-in-waiting said laughing, "You have finally confessed that you favor the dog very dearly."  Kuroudo-Tadataka, who had struck Okinamaru, happened to hear us talking about him, said loudly in the kitchen, "Has he really come back ?  I would like to see him."  I had my servant reply, "Oh, no !  That is none of your business.  There is no dog here you should worry about."  He answered me back, "But there may be a chance for me to find him after all.  You won't be able to conceal him from me forever.

N君:先日、道を歩いていたら看板にデカデカと「ハートフル犬猫病院」と書かれていました。違和感があったので家に帰って辞書を引いてみましたが heartful という形容詞は出ていませんでした。

S先生:heartful は典型的な和製英語で、英語にはこのような単語はありません。ハートフルと言われるといかにも「あったかい」という感じがしますよね。それを言うなら hearty や warm-hearted でしょうね。しかしこんなのは序の口です。先日、腰が痛くて近くの病院に行った時、待合室に看護師さん関連のNGOが作った冊子があってその表紙にデカデカと You are not only one !! と書かれていたのです。おそらく「あなたは独りじゃない」と言いたいのでしょうが、それを言うなら You are not alone !  でしょう。このままだと「あなたは唯一無二の人ではない、どうでもよい人だ」みたいな意味になってしまいます。もしこの間違った意味の文だとしても only one の前に定冠詞が欲しいところです。色々な意味で「日本人の英語」について考えさせられる経験でした。

オリジナル勉強風呂Gu 第555回 2022.9/23

古文研究法16-1 枕草子:「さは翁丸」といふに、ひれ伏していみじく鳴く。御前にもうち笑はせ給ふ。人々集まりて、右近の内侍(ないし)召して「かく」など仰せらるれば、笑ひののしるを、上(うへ)も聞こしめして渡らせおはしまして「あさましう、犬などもかかる心あるものなりけり」と笑はせ給ふ。上の女房たちなども聞きて参り集まりて呼ぶにも、今ぞ立ち動く。なほ顔など腫れためり。

「それじゃ、翁丸なの?」と私(筆者=清少納言)が言うと、犬は這いつくばってひどく鳴く。定子様もお笑いになる。人々も集まって来て、定子様は右近内侍をお呼びになって「これこれのわけで、あの打たれた翁丸が戻って来たのよ」などとおっしゃると皆が大笑いする。それを帝もお聞きつけになってこちらへおいでになり「驚いたことに、犬なんかにもこういう心があるものなのだな」とお笑いあそばす。帝付きの女房たちも騒ぎを聞いて集まって来て翁丸を呼ぶと、翁丸はすぐに立ち上がって動く。でも顔なんかはまだ腫れているようだ。

N君:帝の可愛がっていた猫を追いかけ回した罪で忠隆からたたき出された犬の翁丸が、腫れた顔で数日後にひょっこり廷内に戻って来たところを、清少納言が発見して慰めようとしている場面です。「あさまし」は「驚きあきれる様子」を表す形容詞で試験に頻出です。しかしそんなことよりも、文章全体として「主語や目的語がバンバン省略される」ので、読んでいてもストーリーを追うのが一苦労です。敬語から主語を想像し、話の流れから目的語を想像する、という作業の連続です。これぞまさに古文、という感じがするエッセイでした。

I asked again, "Really ?  Are you Okinamaru ?"  He prostrated himself in front of me, giving a joyful whine.  Princess Teishi gave a smile, too.  People began to gather around the dog.  Calling Ukon-no-Naishi, Princess Teishi said to her, "How amazing !  The Okinamaru, which was seriously hit by Tadataka a few days ago, has now returned here !"  Hearing that, people burst into laughter.  Catching the buzz of people, the Emperor also made a comment with a smile, "I am surprised to know that even a dog has such an affectionate heart as we have."  When the ladieis-in-waiting serving the Emperor gathered there and called the name of the dog, it responded to their voices and staggered to its feet.  But its face seemed to remain edemotous.

S先生:細かいことは抜きにして全体的にはよく書けています。細かいことを指摘しておきましょう。第2文冒頭の People ですがこのままでは「一般的な人々」の意味になってしまいます。ここでは「宮廷のなかにいる皆」の意味なのですから定冠詞を付けて The people にして下さい。同じことが第4文、第5文にも言えますので、people に定冠詞を付けて下さい。逆に第3文冒頭の The Okinamaru はいけません。固有名詞には原則として定冠詞を付けないことになっているので、ここは The を除外しましょう。これに続く関係代名詞 which ですが、おそらくN君は「人ではなくて犬だから who ではなくて which だろう」と考えたのでしょう。確かにそれは正しいのですが、こういう所は翁丸に親しみを込めて who を使ってあげましょう。同じ理由で第6文の it は he、its は his に変えてあげましょう。いつも四角四面ではいけません。

When I said, "Oh !  You are Okinamaru, aren't you ?"  he fell flat and yelped heatedly.  Seeing him so happy, Princess Teishi, too, smiled with a relief.  The people began to crowd around him.  Princess Teishi called Ukon-no-Naishi to see him, saying, "Okinamaru has managed to return home though he was severely struck by Tadataka the other day.  Her words made the people burst out laughing.  The Emperor, who heard the story, also laughed and said that He was very surprised to know even a dog has a human heart.  Hearing the noise, the ladies-in-waiting gathered there and called the dog's name.  Then he staggered to his feet to walk.  Poor thing !  His face still seemed to be badly swollen.

オリジナル勉強風呂Gu 第554回 2022.9/22

N君:古文研究法の途中ですが、これまでの勉強で疑問に思ったちょっとしたことが色々あったので、今日はそれを解決しておきたいと思います。(1) There is none of the wine left.「残っているワインはありません」のように none of +単数名詞 を単数扱いするのは分かります。一方で none of +複数名詞 を単複いずれで扱うべきか、ということをお尋ねしたいです。

S先生:None of the boys were as yet ten years old.「誰も10歳になっていなかった」に対して、None of the boys was as yet ten years old. の場合は強調の意味が強くなって「誰一人として10歳になっていなかった」となります。単複問題は色々なかたちで噴出してきます。たとえば government は米国では単数扱いで The government has fallen. などと書かれるのですが、英国では複数扱いであり The government have broken all their promises. などと書かれるのです。

N君:どんどんいきます。(2) He read her letters home. という文を見ました。これはどういう文ですか?

S先生:この home は副詞の形容詞用法でしょう。「家への手紙」つまり「家族宛ての手紙」の意味だと思います。

N君:(3) More careful examination of the behavior of the criminal may reveal the personarity trait of him.「服役者の行動をもっと注意深く検査するとその人の性格が分かるかもしれません」という文ですが、reveal の目的語に違和感があります。the personarity trait of him は明らかな誤りで、少なくとも the personarity trait of his でなければならない、と思います。しかしこれも不自然であり、his personal trait とか、あるいは the trait of his character とすべきだと思います。

S先生:You are right !  

N君:(4) Though not knowing what words on earth made his boss so angry, Kenny apologized to him.「ケニーはいったいどの言葉が社長をそれほど怒らせたのか分からなかったが、どりあえず謝った」という文なのですが、what words のところを which word にしてもよろしいか ?

S先生:which word にすると「数ある言葉の中のある一つの特定の言葉」というニュアンスになります。what words の場合は「全体として自分の発言のどのあたりが」という感じになります。この原文の雰囲気から考えると what words で良いだろうと思います。

N君:(5) More and more people seldom write a handwritten letter anymore now that they have got used to an e-mail.「今やますます多くの人がメールに慣れてきたので、めったに手書きの手紙など書きません」という文がありました。この文の中に単複問題があります。a handwritten letter は handwritten letters のほうが自然だと思いますし、e-mail は不可算名詞ですから an e-mail は変です。

S先生:handwritten letters のほうが自然ですが a handwritten letter でも別に間違いというわけではありません。an e-mail は誤りで単に e-mail とすべきです。欧米人もこういうところでけっこう間違うんですね。

N君:(6) There remains a question as to whether the consumption tax should be raised or not so as to secure a source of revenue.「歳入源を確保すべく消費税を上げるべきか否かという問題がまだある」という文なのですが、a question は as to whether the consumption tax should be raised or not という句によって限定されているのですから、the question とすべきではありませんか?

S先生:as to whether ~ のことを考えるよりも、There remains ~ は There is ~ の変形ですからその線で考えてみましょう。There is a cat in the kitchen. の場合、the cat とはなりません。昔話にも There once live in Greece a very wise man.「昔々ギリシャにとても賢い男が住んでいました」となります。定冠詞ではなくて不定冠詞になっていますね。同様にこの文でも There remains a question ~ が正しいです。

N君:(7) Eventually it will be up to the personnel manager which person among the five applicants is adopted.「5人の応募者のうち誰が採用されるかは結局人事課長次第です」という文がありましたが、この which person among the five applicants is adopted は it を受けた名詞節なので is ではなくて will be にすべきだと思います。

S先生:You are right !  副詞節の場合は内容が未来のことでも現在形で書く、というならわしがあるのですが、この文は副詞節ではなく名詞節ですから、内容の通り will be にすべきでしょう。

N君:(8) Such a business practice cannot be recommended as it is not in conflict just with a financial matter but with an ethical one.「そのような営業活動はお薦めできません、というのは、それは財政問題のみならず倫理問題にも抵触するからです」みたいな文が出ていました。まず as はどうなのか?という気がします。普通に because でよいと思います。そのことはどうでもよいのですが、not の位置が変だと思います。not はここではなくて in conflict の後ろ、つまり just の前に持って来るべきだと思います。こうすることで not only ~ but also ~ の構文になると思います。

S先生:as は古臭い感じがするので because のほうが自然な気がします。not の位置を後ろにずらして it is in conflict not just with a financial matter but with an ethical one とすることに私も賛成です。原文はなんだか変な英文ですね。

N君:今日質問したものは全て英語の学習書から採ったものです。けっこう間違っているんだな、と思いました。

S先生:紙に印刷されているからといって正しい英文とは限りません。かなり以前に紹介したことがありましたが、1854日米和親条約の原文を英文と和文で読み比べてみると信じ難い誤訳があります。しかも複数個所あります。公文書でさえそんな有様なのですから、英語学習書くらいの記述を鵜呑みにしてはいけませんよ。常に自分の頭で考え、分からぬ点はメモしておいて上級者に尋ねるようにしていきましょう。かく言う私も分からぬことだらけです。

オリジナル勉強風呂Gu 第553回 2022.9/21

古文研究法15 源氏物語夕顔:いといみじと思(おぼ)して「我もいとここち悩ましく、いかなるべきにかとなむおぼゆる」とのたまふ。「何か、さらに思ほしものせさせ給ふ。さるべきにこそ、よろづの事は、はべらめ。人にも漏らさじと思ひたまふれば、惟光(これみつ)おりたちてよろづはものしはべる」など申す。

源氏の君は、大変ひどい状態だとお感じになって「私もたいそう気分が悪くこの先どうなるんだろうかと案じられる」とおっしゃる。これを聞いて惟光は「何をこのうえ御心配なさるのでございますか。万事はそうなるはずの運命でございましょう。他人には秘密にと存じておりますので、私が乗り出して何もかもやっておきます」と申し上げる。

N君六条御息所の生霊によって夕顔が呪い殺された直後に気弱になった源氏を、家来の惟光が励ましている場面です。「たまふ」は普通は尊敬語ですが、会話文の中に使われて話者の動作、特に見る・聞く・思ふ などにくっついた「たまふ」は謙譲の補助動詞です。ここではまさに謙譲語としての「たまふ」が登場しました。また惟光のセリフの始めの所に「ものす」という動詞が出ましたがこれは英語では do に当たり、その状況に応じて臨機応変に訳さなければなりません。

Feeling very uneasy, Lord Genji said, "I don't feel good, either.  I am anxious about how things will develop from now on."  Koremitsu answered in an encouraging tone, "Now that what we feared has come to pass, there is no reason why you should worry about that.  Everything is doomed to go on irrespective of your expectation.  Since this case should be veiled from people, I will exert myself to cope with all the matters.

S先生:第3文の Everything is doomed to go on irrespective of your expectation.「何事も源氏様の期待とは無関係に進んでいくものですよ」という言い方もありますが、Everything is doomed not to go as you are expecting.「何事も源氏様の思ったようには進まない運命なのでございますよ」という言い方もあります。

Feeling very sad, Lord Genji said, "I feel unwell.  What in the world will become of me ?"  Hearing his words, Koremitsu solaced him, saying, "You have nothing to worry about further.  Everything must be destined to become as it is.  I think we must make it secret that you are so discouraged, so I am going to do positively what I have to for you.